LABプロファイル

LABプロファイルとは

LABプロファイル(Language and Behavior Profile)は、人々の言語パターンと行動を分析し、その人の思考プロセスや動機付けを理解しその人の行動に影響をあたえる言葉を体系化した実用的な知識体系です。

  • 人が特定の状況でどのような特徴を示すかをその人の行動と言葉の表現の仕方とから解析することで、その人がその状況でどのような視点で物事をとらえているかを行動を起こす傾向があるのかを知識として体系化し誰でも活用できるようにしたものと考えてください。

この記事では、LABプロファイルの基本概念から実践的な応用まで、詳細に解説していきます。

LABプロファイルの魅力

LABプロファイルは、ロジャー・ベイリーによって開発され、マスタートレーナーの資格をもったシェリー・ローズ・シャーベイ(Shelle Rose Charvet)の活動によって世界中に広まりました。この手法は、人々のコミュニケーションパターンを分析し、その背後にある思考プロセスや動機付けを理解することを可能にします。

LABプロファイルの基本概念

1. コンテキストの重要性

LABプロファイルとコンテクスト:言葉と行動の鍵を握る状況認識

LABプロファイルは、人々のコミュニケーションパターンと行動を分析する手法ですが、その中核にあるのが「コンテクスト」という概念です。コンテクストとは、ある状況や文脈のことを指し、LABプロファイルでは人々の言葉や行動がこのコンテクストによって大きく影響を受けると考えています。

コンテクストによる言葉の意味の変化: 例えば、「大丈夫」という言葉を考えてみましょう。友人との気軽な会話で「大丈夫」と言う場合と、重要なビジネス会議で「大丈夫」と言う場合では、その言葉の持つ重みや意味合いが大きく異なります。前者では単なる肯定的な返事かもしれませんが、後者では責任を伴う確約となる可能性があります。

このように、同じ言葉でも、それが使われるコンテクスト(状況)によって、その解釈や重要性が大きく変わることがあります。LABプロファイルは、この言葉とコンテクストの関係性に着目し、より深いコミュニケーションの理解を目指しています。

コンテクストと行動パターン: LABプロファイルでは、人々の行動パターンもコンテクストに強く依存すると考えています。例えば、ある人が職場では非常に積極的で主導的な態度を取るのに、家庭では控えめで協調的な態度を取るということがあります。これは、その人が「職場」と「家庭」という異なるコンテクストを認識し、それぞれの状況に適した行動を取っているためです。

興味深いのは、人々が同じようなコンテクストを認識すると、似たような行動パターンを示す傾向があることです。例えば、「重要な商談」というコンテクストでは、多くの人が緊張し、慎重に言葉を選び、相手の反応に敏感になるといった共通の行動パターンを示すことがあります。

コンテクストの変化による行動の変化: さらに、LABプロファイルは、人々のコンテクストに対する認識が変わることで、その行動も変化すると指摘しています。例えば、ある会議を「単なる定例ミーティング」と認識していた人が、突然それが「重要な決定を下す場」だと認識を改めた場合、その人の態度や発言は大きく変わる可能性があります。

この「コンテクストの認識変化」は、人々の行動を理解し、また変化させる上で非常に重要です。例えば、チームのパフォーマンスを向上させたい場合、メンバーがその状況をどのように認識しているかを理解し、必要に応じてその認識(コンテクスト)を変えることが効果的な戦略となり得ます。

LABプロファイルの実践的応用:

LABプロファイルを用いることで、特定のコンテクストにおける人々の言語パターンや行動傾向を分析し、理解することができます。これは、効果的なコミュニケーション戦略の立案、チームマネジメント、リーダーシップの向上など、様々な分野で応用可能です。

例えば、セールスの場面では、顧客がその状況をどのように認識しているか(コンテクスト)を理解し、それに合わせたアプローチを取ることで、より効果的な説得や交渉が可能になります。また、組織変革を進める際には、メンバーが現状をどのようなコンテクストとして捉えているかを分析し、必要に応じてその認識を変えるような働きかけを行うことで、変革への抵抗を減らし、スムーズな移行を促すことができます。

結論: LABプロファイルにおけるコンテクストの概念は、人々のコミュニケーションと行動を理解する上で非常に重要です。言葉の意味や解釈がコンテクストによって変化すること、人々が同じコンテクストを認識すると類似の行動パターンを示すこと、そしてコンテクストの認識が変わることで行動も変化することを理解することで、より効果的なコミュニケーションと人材マネジメントが可能になります。

LABプロファイルは、この「コンテクスト」というレンズを通して人々の言動を分析し、理解することで、ビジネスや人間関係の様々な場面で活用できる洞察を提供します。コンテクストを意識することで、私たちは他者をより深く理解し、より効果的にコミュニケーションを取り、そして必要に応じて状況の認識を変えることで、望ましい変化を促すことができるのです。

2. LABプロファイルのカテゴリーとパターン

LABプロファイルは14のカテゴリーと複数のパターンで構成されています。以下に、各カテゴリー、関連する質問、パターンの定義と特徴を示します:

1. 主体性

  • 質問なし
    • 主体・行動型: 行動、する、ストレートな言い回し
      • 定義: すぐに行動に移す。主体的に行動してから考える。
    • 反映・分析型: 分析する、考える、非断定的言い回し
      • 定義: 物事をじっくり考え、状況を理解してから行動に移す。

2. 価値基準

  • 質問: あなたにとって(コンテクスト、例:仕事)で大切なことってなんですか?

* 定義: 価値観につけているラベル、感覚や感情に刺激をあたえる言葉、正しいか間違っているかを判断するときの基準となる言葉。

3. 方向性

  • 質問: それ(価値基準)ってどうして大切なのですか?(3回繰り返す)
    • 目的志向型: 達成する、獲得する、所有する
      • 定義: 目標を達成することに焦点が置かれる。方向性が明確。
    • 問題回避型: 避ける、取り除く、問題を認知する
      • 定義: 問題を発見し、回避し、解決することに焦点をあてる。

4. 判断基準

  • 質問: 良い(例:仕事)ができたなと、どのようにしてわかりますか?
    • 内的基準型: 自分の感覚で分かる、自分で決める
      • 定義: 自分の中に判断基準があり、自分で決定したいと考える。
    • 外的基準型: 周りの人に言われて、数字や情報でわかる
      • 定義: 周りからのアドバイスを尊重し、周りや人に判断を委ねる。

5. 選択理由

  • 質問: どうして(例:今の仕事)を選んだのですか?
    • オプション型: 価値基準、機会、可能性、多様性
      • 定義: 絶えず他の方法や別の選択肢を見つけ出そうとする。
    • プロセス型: 経緯、どのように、必要性、選んでいない
      • 定義: 既存のプロセスやスケジュールに沿って進めるのが得意。

6. 変化相違対応

  • 質問: 今年の(例:仕事)と去年の(例:仕事)の関係はどんなものでしょうか?
    • 同一性重視型: 同じ、変わらない
      • 定義: 長期の安定を求める。既存のものとの共通点に焦点をあてる。
    • 進展重視型: もっと、より~、比較、改善
      • 定義: 持続的な変化や進展を求める。
    • 相違重視型: 変化、新しい、ユニーク、斬新、改革
      • 定義: 劇的な変化や革新を好む。相違点に焦点をあてる。

7. スコープ

  • 質問なし
    • 全体型: 全体像、大枠、(情報をランダムに)
      • 定義: 物事の全体像をざっくりと把握しようとする。
    • 詳細型: 詳細、順番、正確に、(情報を順序正しく)
      • 定義: 細かいところまで正確な情報を求める。

8. 関係性

  • 質問なし
    • 内向型: 短く単調な応答
      • 定義: 非言語の表現よりも話の内容や言葉を重視する。
    • 外向型: 表現豊かに相手に合わせて反応する
      • 定義: 言葉以外の表情や振る舞いを重視し他人の感情に気を配る。

9. ストレス反応

  • 質問: (例:仕事)で困った時のことを教えてもらえますか?
    • 感情型: 感情モードにとどまったまま状態が続く
      • 定義: 感情をエネルギーとして発揮する。感情モードの切り替えは苦手。
    • チョイス型: 一時感情的になるが冷静になる
      • 定義: 自分の意思で感情をコントロールできる。共感するのが得意。
    • 冷静型: 感情的にはならない
      • 定義: 日常的ストレスで感情的にならない。

10. 連携

  • 質問: (例:仕事)で(価値基準)を感じた時って、どんな時ですか? (回答を待つ)
    • 個人型: 一人で、個別に、自分で全責任を負って
      • 定義: 個人で全責任を持って、単独で行動することを好む。
    • 近接型: 私の権限、リードする、周りに囲まれて
      • 定義: 人と関わりながらも自分のテリトリーを求める。
    • チーム型: 我々、チーム、一緒に、協同責任で
      • 定義: 他人と責任を分担し人と交流することを好む。

11. システム

  • 質問: それのどこが好きでしたか?
    • 人間重視型: 固有名詞や呼称、気持ち、共感を表す言葉
      • 定義: 人との関わり、人の感情を重視する。気持ちや感情に焦点をおく。
    • 物質・タスク重視型: ツール、タスク、結果、アイデア
      • 定義: タスクを完遂させること、アイデア、ツール、システムを重視する。

12. ルール

  • 質問:
  • あなたが(例:仕事)でもっと実績をあげるのに良い方法って何ですか?
  • 他の人が(例:仕事)でもっと実績をあげるのに良い方法って何ですか?
    • 自分型: 私のルールは相手のルール
      • 定義: ルールをよく理解し、他人にも従うように主張する。
    • 無関心型: 私は私のルールで、他の人は興味なし
      • 定義: 自分のルールを他人に押し付けず他人のルールに従わない。
    • 迎合型: ルールが与えられたら私にも相手にも適用
      • 定義: 自分が属する集団のルールに従う。
    • 寛容型: 私は私のルールで、相手は相手のルールで
      • 定義: ルールは理解しているがそれを強制することには躊躇する。

13. 知覚チャンネル

  • 質問: 人が(例:仕事)ですごいって、どのようにしてわかりますか?
    • 視覚型: 証拠を見る
      • 定義: 見て、決める。ヴィジュアル重視。
    • 聴覚型: 何かを聴く
      • 定義: 聞いて、決める。話し合い重視。
    • 読解型: 書かれた物を読む
      • 定義: 読んで、決める。ドキュメント重視。
    • 体感覚型: 作業をしてみる
      • 定義: 自分が行動し、体感してみて、決める。

14. 納得モード

  • 質問: その人がすごいって、どのくらい(見ると / 聞くと / 読むと / 一緒に働くと)納得しますか?
    • 回数重視型: 数回、次回
      • 定義: 1回の事例や回数を重ねることで、決める。
    • 直感重視型: すぐお分かりのように
      • 定義: 少しの情報から自動的に素早く判断する。
    • 疑心型: お試しいただいて、前回同様
      • 定義: なかなか納得しない。その都度データの一貫性を重要視する。
    • 期間重視型: ~年前から、しばらく
      • 定義: 一定の期間吟味して、決める。

LABプロファイルの実践

プロファイリングのプロセス

  1. 質問と回答の分析
  • 特定のコンテキストを設定し、各カテゴリーに関連する質問を行う
  • 回答に含まれる言葉の使用頻度や割合を分析し、パターンの傾向を判断する
  1. 「推量」と「検証」
  • 「推量」:質問から相手のパターンを推測する
  • 「検証」:影響言語を使用して推測したパターンを確認する
  1. 例:内的基準型の検証 「仕事では、何かを決めるときに自分で決めるのですね」というステートメントに対する反応を観察
  2. 数値化と標準化
  • カテゴリーごとに合計値を固定(例:3)し、個人間の比較を可能にする
  • 例:内的基準型1、外的基準型5の場合、0.5と2.5に調整

影響言語の活用

LABプロファイルでは、各パターンに対応する「影響言語」を使用することで、効果的なコミュニケーションを行うことができます。影響言語は、特定のパターンを持つ人に響く言葉や表現のことです。

例:

  • 内的基準型:「ご自身で決めてほしいのですが」
  • 外的基準型:「他の人はこのように考えていますが」

LABプロファイルの応用

1. ビジネスでの活用

  • 採用:候補者の動機付けや意思決定スタイルを理解し、適切な人材を選考
  • セールス:顧客のコミュニケーションスタイルに合わせた提案を行い、成約率を向上
  • マーケティング:ターゲット層の言語パターンを分析し、効果的な広告メッセージを作成
  • リーダーシップ:チームメンバーの多様性を理解し、個々の強みを活かしたマネジメント

2. チーム・組織分析

  • 個人分析の結果を集約してチームや組織の分析に適用
  • チームの平均値を算出して傾向を分析
  • 文化圏比較:文化圏をチームとして捉え、LABプロファイルパターンの違いを比較分析

3. 個人の成長と自己理解

  • 自己のコミュニケーションパターンを理解し、改善点を特定
  • 他者とのコミュニケーションをより効果的に行うためのスキル向上
  • キャリア選択や自己啓発の方向性を決定する際の指針として活用

LABプロファイルの歴史と発展

  1. 1980年代:ロジャー・ベイリーによる開発
  2. 1990年代:シェリー・ローズ・シャーベイによる発展と体系化
  3. 2000年代以降:ビジネス界での普及と多様な分野への応用

LABプロファイルとNLPの関係

LABプロファイルは、NLP(神経言語プログラミング)のメタプログラムを発展させたものです。NLPの基本概念を基礎としながら、より体系的かつ実用的なツールとして進化しました。

LABプロファイルとiWAMの関係

iWAM(Inventory for Work Attitude and Motivation)は、LABプロファイルの概念を基に、ウェブベースの診断ツールとして開発されました。iWAMは、LABプロファイルの手法をより大規模な組織評価や人材開発に適用できるよう設計されています。

LABプロファイルの限界と倫理的配慮

  • プロファイル作成者の知識や経験の差が結果に影響する可能性
  • プロファイル作成者の個人的傾向が分析に混入する可能性
  • 結果の解釈には注意が必要(人格や性格ではなく、特定状況下での傾向であることを強調)
  • コンテキストを常に明示することの重要性(例:「仕事では〜」)

LABプロファイルの学習と認定

LABプロファイルを正確に使用するためには、専門的なトレーニングが必要です。以下に、LABプロファイルの資格認定ステップを示します:

  1. LABプロファイルプラクティショナー認定
  • LABプロファイルプラクティショナー認定コース受講で取得可能
  1. LABプロファイルマスタープラクティショナー認定
  • LABプロファイルマスタープラクティショナー認定コース受講で取得可能
  1. LABプロファイルトレーナー・コンサルタント認定
  • LABプロファイルコンサルタント・トレーナーズ認定コース受講で取得可能
  • 前提条件:LABプロファイルプラクティショナー認定資格が必要
  • 推奨:LABプロファイルマスタープラクティショナー認定資格
  • 特典:認定を受けるとLABプロファイルプラクティショナー認定コースとLABプロファイルマスタープラクティショナー認定コースの開催が可能
  1. LABプロファイルグループコーチ認定
  • LABプロファイルコンサルタント・トレーナーズトレーニングにコーチとして参加することで取得可能
  • 前提条件:LABプロファイルコンサルタント・トレーナー認定資格が必要
  1. LABプロファイルマスターコンサルタント認定
  • LABプロファイルマスターコンサルタント認定コース受講で取得可能
  • 前提条件:LABプロファイルコンサルタント・トレーナー認定が必要

これらの認定プロセスに加えて、以下の実践的な経験も重要です:

他の学習者との結果比較による自己改善す。

知識のあるトレーナーの下で実践経験を積む

各パターンの概念を自分で説明できるレベルの知識を習得

約100人のプロファイリング経験を積む

まとめ

LABプロファイルは、人々のコミュニケーションパターンと行動を深く理解するための強力なツールです。ビジネスから個人の成長まで、幅広い分野で活用できる可能性を秘めています。しかし、その使用には適切な訓練と倫理的配慮が必要です。LABプロファイルの理解と適切な活用は、より効果的なコミュニケーションと、個人・組織の潜在能力の最大化につながるでしょう。